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隕石発電〜四郎様のif 新エネルギー計画〜

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四郎様が何やら新エネルギー計画を思いついたようです。

目次

隕石発電の仕組み

隕石発電の基本的な仕組みは水力発電と同じである。運動エネルギーを回転エネルギーに変換する(図1を参照)。

まずは虫取り網のようなものを用意する。ただし、網の部分は耐久性の高い「カーボンナノチューブ」、柄の部分も耐久性の高い「ステンレス合金」等を想定する。柄の端をモーター発電機に繋げる。

落下する隕石を網で捕獲すると隕石の落下エネルギーによって虫取り網のようなものは固定された柄の端を軸に回転運動をする。これによってモーター発電機が回転し発電できるという仕組みである。発電した電気は電波などによって地球に送ったり、宇宙ステーションで利用したりすることができる。

図1:隕石発電の仕組み

発電設備は宇宙空間に、宇宙ステーションのような形で配置する。その理由は安全性と効率である。

落下する隕石を利用するため、もし捕獲できなかった場合地上に隕石が激突する危険性がある。その点宇宙空間であれば捕獲に失敗しても地球大気によって燃え尽きてくれる可能性が高いく危険性が少ない。効率という観点からも宇宙に設置するのは重要である。そもそも地上に設置する場合、ほとんどの物体は大気圏突入の際に燃え尽きてしまう。宇宙空間であればその心配もない。また、空気抵抗のない大気圏外では、空気抵抗によるエネルギーロスがなく、落下する隕石の落下エネルギーを最大限電気エネルギーに変換できるのも大きい。

ただし、隕石は落下頻度が非常に限定的である上に予測が難しい。そこで運用終了した人工衛星に着目する。運用終了した人工衛星やその残骸は「宇宙ごみ」として処分の問題を抱えている。この人工衛星を磁石を接近させたり、レーザーを照射することによって周回軌道を変化させ、落下させる。人工衛星を用いた隕石発電はエネルギー問題と宇宙ごみ問題の両方にアプローチをかける革新的な発電である。

エネルギー概算

落下する物体の質量をm、落下速度をvとすると、落下エネルギーEは

E = 12 m v2

と表される。このエネルギーをすべて電力に変えることはできない。発電効率をeとする。さらに発電された電力を地球まで輸送するのにもロスがある。この輸送効率をtとする。

結果的に得られるエネルギーは:

Eeff = e × t × E

Planck衛星の場合

一例としてplanck衛星を取り上げる。

Planck衛星はEuropean Space Agency(ESA:業界ではイーサって呼んでいる)が打ち上げた宇宙マイクロ波背景放射(CMB)を測定するための衛星である。ちなみにCMBはビッグバンの残光とも呼ばれ、宇宙がまだ熱かった時の名残である。これを調べれば宇宙初期の状態がわかるという算段である。宇宙論におけるモデル検証は「まずPlanck」と言って差し支えはない。それくらい宇宙論の基礎となるデータをもたらしたのがPlanck衛星なのである。

CREDIT: ESA (Image by AOES Medialab)

CREDIT: ESA and the Planck Collaboration

Planck衛星が測定したデータには僕も、Phase Transition of Early Dark Energy[1]やCosmologically Coupled Black Hole[2]などの非標準的な現象の検証で、度々お世話になっている。これからもよろしく。

というわけでPlanckに燃え尽きてもらう。

Planck衛星の重量は1800kgである。落下速度は途中の運動にもよるが、ここでは第一宇宙速度8km/sを仮定する。発電効率を60%、輸送効率は30%と見積もることにする。得られるエネルギーは、

Eeff ~ 1.04×1010J ~ 2.88×103kWh

1家庭の1年間の消費電力は約3950kWhと言われているので、Planck1機でだいたい1家庭1年分の電力を生み出せる試算になる。

山積する課題

まずは、設備強度の問題がある。落下する隕石を捕獲しても破損しない網と柄が必要である。カーボンナノチューブの網やステンレス合金の柄が耐えれるかは知らない。(多分ステンレスは厳しい。)

次に、安定軌道の問題がある。先ほど述べたように宇宙ステーションに発電設備をつける場合、安定軌道で周回させなければならない。その上落下する人工衛星を捕獲するためには人工衛星より内側の軌道が必要である。多くの人工衛星はすでに安定軌道に周回しているため、それより内側に配置できるか、安定軌道を維持しながら落下する人工衛星を捕獲できるかは大きな課題である。

最後はコストに対する発電量の少なさである。どう考えても衛星一つで1家庭の1年分では、宇宙ごみの処理を差し引いても費用対効果が少ない。ただ、宇宙ステーションの維持電力を隕石発電で賄うことはできるかもしれない。輸送効率を考えると、宇宙空間で利用を模索すべきである。建設コストはかなり深刻な問題である。1家庭の1年分の電力がやっとな設備を誰が建て、維持するのか。宇宙ごみの処理を差し引いても、やはり割に合わない。

四郎様の末路

まとめ

最近結界を張れるようになった諏訪姫母上様のおかげで無事に終わりましたね、四郎様。隕石発電に未来はあるのか?四郎様の挑戦は続く...。


参考文献

[1]S. Hayashi, T. Minoda and K. Ichiki "Constraints on the phase transition of Early Dark Energy with the CMB anisotropies" https://doi.org/10.48550/arXiv.2210.03348

[2]Shintaro. K. Hayashi "Constraints on Cosmologically Coupled Black Holes from Planck 2018 and Other Cosmological Probes" https://doi.org/10.48550/arXiv.2507.03408

[3]環境省「家庭でのエネルギー消費量について」 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/kateico2tokei/energy/detail/01/